こんにちは、公認心理師・臨床心理士のnachiです。
「心理学で初めに知っておくといいこと、読んでおくといい本ってあるのかな?」
「どこからとっかかればいいんだろう?」
心理学を始めて勉強しようと思うと、そのように思うでしょう。
実際、心理学は入口が大事で、私も全体像をつかむまでかなりかかりました。
心理学の世界に10年以上いる私が、初めに読むべき心理学入門書を3冊紹介します。
この記事を読むと、これから心理学を学ぼうとするとき、どんなことに気をつけて、どの入門書を読めばいいかがわかります。
おすすめ入門本3選【これから心理学を学びたい人向け】
どんな心理学を学ぶにしても、知りたいことがあるにしても、その学問としての前提を知っておくことが、そのあとの勉強に役立つと思います。
しかし、今回私が紹介するのは、「日常生活で簡単に使える心理学」とか「よくわかった気がする心理学」というものではなく、「これから心理学を長く学んでいきたい人にとっての心理学入門書」です。
その点は明確に異なりますので、悪しからず。
➀から順に読んでいくことをおすすめします。
➀マンガでわかる! 心理学超入門
・発行年月日:2017年6月8日
・ページ数:全288ページ
・コンテンツ:日常で使える・友人関係・対人関係・仕事・ビジネス・恋心がわかる・恋愛がうまくいく・自分を変える・自分を高めるー心理学
・学べること:
心理学がどんなものを扱うかがわかる
タイトルにもある通り、「マンガ」であることが最大の魅力です。
どこかの商材に付録されるマンガのような、無理やりな宣伝用の内容はなく、物語として読みやすいです。
心理学には「専門用語」があることを知ることができる
心理学が混乱するポイントとして、専門用語があげられます。
そのため、初めて心理学を学ぼうとする人には「自分の知りたいことは心理学なのか?」「何て呼ばれているのか?」ということが、わかりずらいです。
そこを暗に教えてくれます。
無料で読める
Amazonのprime会員だと、Kindle版を0円で読めてしまうのもおすすめポイントです。
②Newton別冊「ゼロからわかる心理学」
・発行年月日:2019年3月5日
・ページ数:全144ページ
・コンテンツ:プロローグ・性格の心理学・人間関係の心理学・集団の心理学・記憶の心理学・発達の心理学・心理学と治療・心理学と環境
・学べること:
「心理学とは何か」を教えてくれる
まず、プロローグで、初めて学ぶ人が「心理学」についておさえるべきポイントをしっかりまとめてくれています。
ほとんどの「入門」や「わかりやすい」と書いてある心理学の本は、「すぐに使えること」や「とっつきやすさ」を前面に打ち出しています。
しかし、そのために、「心理学という学問は、人間の心理というものを対象にする『科学』である」ということをはっきりと書いていないものが多いです。
性格や集団の心理学、神経心理学などの、どの分野にも共通する前提は、「お手軽さ」よりも重要です。
合わせて、心理学を趣味で独学、難しいのはなぜ?【理由は3つ】もご覧ください。
近い分野への「心理学」の立ち位置を教えてくれる
心理学が「他人をなおすこと」をどのように捉えているかや、遺伝と環境の関係についてもしっかりと触れてくれているので、心理学のポジションを把握しやすい一冊になっていると思います。
コスパがいい
なにより、安くて、薄いのがいいですね。
普通、心理学の専門書や大学で教科書として使う本は安くて3000円~です。4000、5000円以上するものがザラです。
学問としての基礎をおさえるという大切な目的で入門書を読むなら、このコスパは素晴らしいと思います。
③はじめて出会う心理学〔第3版〕
・発行年月日:2020年10月28日(2000年3月1日が初版)
・ページ数:全357ページ
・コンテンツ:心理学とは・心の進化・心の発達・ライフサイクル・動機付けと情動・性格・知能・ストレスとメンタルヘルス・カウンセリングと心理療法・感覚・知覚・記憶・[学習・言語]
・学べること:
学問としての範囲や考え方がまとめられている
この本は、大学生の一般教養として「心理学」の授業選択をしたときに、教科書になるものです。
つまり、それだけのレベル感(専門用語が含まれる)ということです。
著者の先生方も、心理学業界で日々研究をし、本を書いている人たちのため、自然と出てくる言葉や説明が、初めての人にはオカタイ読み物となっています。
そのため、「心理学で『感覚』ってこんな風に扱うんだ」、「『知能』ってなんだろう」などもしっかりとおさえることができます。
心理学の活用分野や職業を知ることができる
「心理学でどんなことがわかるのか」「学んだ心理学を活かして就職するとしたらどんな分野があるのか」など、専門家としての仕事についてもまとめられています。
カウンセラー初の国家資格である「公認心理師」、2017年に施行された「公認心理師法」にも触れてくれています。
心理学に興味があって、これから学びたい、カウンセラーになりたいと思っている人にとっては、難しいけど必読の一冊です。
【重要】「入門書」は全体像を教えてくれない
3冊の入門書を紹介しました。
それは、心理学は入口が肝心だと思うからです。
そして、おどろくべきことに、心理学入門書は心理学の全体像を教えてはくれません。
理由は3つ。
②心理学の範囲は明確ではないから。
③わかってることしか本にならないから。
順に説明していきます。
➀心理学への理想と現実の差が大きいから
心理学は、世の中で誤解されていることが多いです。
「他人を思い通りに動かせる」「心が読めるようになる」・・・。
まったくそうじゃないとは言いませんが、そのような方面に認識が偏り過ぎている現状があります。
心理学は、もっと範囲が広く、泥臭い学問です。ノーベル科学賞を受賞できるような大きな発見があったり、パッと魔法のように何かを解決したりするものではないのです。
「入門書」という名前の本では、その分量や「入門書」という性質上、誤解を解くことに終始せざるを得ないのです。
そのため、「こんなことを知るのが、心理学だよ」「こんな内容も心理学だよ」という紹介になってしまう。
結果、1冊の本で、広く浅くか、部分的でキャッチーなものになってしまいます。
②心理学の範囲は明確ではないから
そもそも、心理学の範囲は広く、「ここまでが心理学だよ」とは言えません。
想像してみてください。
人間の行動、活動、生活・・・全てに「こころ」というものが関わっているため、広くとらえれば、心理学の対象はどこまでも広くなってしまいます。
恋愛、学校生活、子育て、仕事、経済活動・・・。
だから、「○○心理学」も無数にあります。
主要な心理学の分類については、心理学の種類【公認心理師がわかりやすく分類】にまとめていますので、関心のある人はどうぞ。
③わかってることしか本にならないから
学問とは知識の集大成です。
そのため、わかっていることは文章になり、本になるけど、わかっていないことは本にはなりません。
科学の中でも、生物や化学の分野では、「どの分野でどこまでわかっていて、ここからがわかっていないんだな」ということが、比較的わかりやすいです。
しかし、心理学では、「自信」一つとっても、たくさんありましたよね。理由は多々ありますが、他の科学分野と比べても、はっきりしたことがわかりずらいのは現状です。
だからこそ、心理学の本、特に入門書では、わかっている、はっきりしたことだけが書かれているのです。それが入門書の限界ともいえると思います。
これから学ぼうとする人は、「入門書」で全てを理解しようとしないことが大切です。
大学で心理学を専攻した私は、心理学の「し」のあたりで迷子になった期間が長く、苦しかったです。
しかし、心理学はなじんでくるとためになることも多い学問です。
心理学の世界にいる私が思う、心理学を学ぶメリットについては、大学で心理学を学ぶということ【高校生向け】をご覧ください。
みなさんは、入口で迷わず、勉強していってくださいね。
今回はここまで。
おわり。
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