公認心理師の上位資格?認定専門公認心理師とは【現役心理師の意見】

カウンセラー5年未満の人向け

こんにちは、現役公認心理師のnachiです。

この記事では、「認定専門公認心理師ってなんぞや?」「いくらかかるの?」と思っている人に向けて、説明します。

公認心理師の現状を踏まえての私の意見も書いていますので、今後資格取得をするかどうかの参考にしてください。

 

 

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認定専門公認心理師・認定専門指導公認心理師とは何か

この資格は、「一般社団法人 日本公認心理師協会」という団体が認定しているものです。

「一般社団法人 日本公認心理師協会」は、公認心理師認定証にも名前のある、心理士ならば知らない人はいないであろう村瀬佳代子さんを初代会長とし、

2019年に日本初の心理職の国家資格である公認心理師が誕生したことを受け、
~略~
保健医療・福祉・教育・産業労働・司法等々のさまざまな分野における公認心理師の職能の開発と向上を目指し、社会貢献活動や政策提言、会員等への教育研修・情報提供、そして相互研鑽などを行う

という目的のもと運営されている職能団体です。

賛助会員や関連学会・団体、職能団体の協力・協賛については、「一般社団法人 日本公認心理師協会について」をご覧ください。

さて、認定専門公認心理師・認定専門指導公認心理師について、協会による「一般社団法人日本公認心理師協会 専門認定に関する規程」によると、以下のようなことがわかります。

・公認心理師の資質向上と生涯にわたっての職業的発達に資する目的がある
・協会の正会員が対象
・認定専門公認心理師・認定専門指導公認心理師になるには
・研修は全部で5種類(1 時間当たり 1 単位)
・5年ごとの更新制

順にもう少し詳しく見ていきましょう。

公認心理師の資質向上と生涯にわたっての職業的発達に資する目的がある

公認心理師は、生涯発達を目指す必要があり、新しい知識、技術を身に着け、研鑽し、患者やクライエントに寄与することを重要視しているといえます。

そのために、公認心理師になった者が、さらに専門性を高める一手段として、専門性の高い公認心理師の代名詞として、認定専門公認心理師・認定専門指導公認心理師という認定資格が用意されたといえます。

協会の正会員が対象

この協会への入会は、今後公認心理師に限定されていきますが、☆現状は臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理師、特別支援教育士も正会員になることができます。

☆協会HPには、「平成34年9月14日の経過をもって将来に向けて消滅する。」とある。

会員には4種類(正会員、準会員、賛助会員、名誉会員)ありますが、一般的には、正会員と準会員です。

正会員は公認心理師がなることができます。しかし、臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理師、特別支援教育士で正会員であった人の中で、公認心理師でない人は平成34年以降準会員となるようです。

つまり、協会に入会した公認心理師が対象ですということです。

認定専門公認心理師・認定専門指導公認心理師になるには

では、認定専門公認心理師や認定専門指導公認心理師とは、何なのでしょうか。

簡単に言うと、協会に所属している公認心理師の中で、

a. 公認心理師 + 専門性 = 認定専門公認心理師で、

b. 認定専門指導公認心理師 +人材育成・制度の発展 = 認定専門指導公認心理師です。

以下で、なるための条件を見ていきましょう。

a. 認定専門公認心理師

  1. 公認心理師の登録を受けた後、
  2. 5年以上の実務経験が必要。
  3. 協会が指定した➀導入研修、②専門研修Ⅰ、⑤テーマ別研修 20 単位以上を受講
  4. 受講した後に、③専門研修Ⅱを受講した者が
  5. 協会の審査を経て、認定される。

b. 認定専門指導公認心理師

  1. a. 認定専門公認心理師の認定を受けた後、
  2. 特定の分野における5年以上の実務経験が必要。
  3. 協会が指定した⑤テーマ別研修 25 単位以上を受講
  4. ④エキスパート研修を受講
  5. ④プロフェッショナルポートフォリオを提出した者が
  6. 協会の審査を経て、認定される。

 

なるほど、公認心理師の上位資格が認定専門公認心理師であり、認定専門公認心理師の上位互換資格が認定専門指導公認心理師といえるわけです。

単位については、以下で見ていきましょう。

研修は全部で5種類(1 時間当たり 1 単位)

研修の種類は5種類です。

”引用”を主とし、書かせてもらいました。また、現状不明点に関しては、「⇐根拠」という形で書きました。引用元は

➀導入研修

基本的な倫理や公認心理師の職責、法制度等の知識、本協会の生涯研修や専門認定制度を理解するための研修。

②専門研修Ⅰ

導入研修を終えた人が対象で、
公認心理師として必要となる倫理、職責、法制度等の知識、医師等との多職種連携に関する理解を深め、公認心理師としても知識と技術を修得するための研修。

③専門研修Ⅱ

専門研修Ⅰを終えた人で、かつ、公認心理師登録後3年目以上の人が対象で、
公認心理師として必要となる倫理、職責、法制度等の知識を用いて、多職種連携も含め、複数の分野にわたる特徴を理解し対応するための知識と技術を修得するための研修。
また、公認心理師としての応用実践力を修得するための研修。

④エキスパート研修

公認心理師登録後8年目以上の人が対象で、
各分野でのエキスパートとしての立場を有し、⇐何で証明するのか不明。専門研修Ⅰ・Ⅱ?

その分野において高度な応用実践力を修得するための研修。
また、実習生や臨床実務経験の少ない専門家の指導を十分に行うことができるようになるための研修。
加えて、プロフェッショナルポートフォリオの作成に取り組み、自己研鑽の計画を策定する力を養成する研修。

⑤テーマ別研修

分野別または課題別にテーマを設定し、そのテーマに関して学修を深めるための研修。
分野別は、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働に分類。

また、課題別として、発達障害、災害、自殺、ひきこもり、アディクションなど、複数の分野にわたる内容のテーマ別研修も設定する。

さらに、心理アセスメント、心理面接、コンサルテーションといった、どの分野にも共通するテーマ別研修も設定する。

研修は、受講者が自分のレベルにあったものを選択できるように、「基礎」、「応用」を明示。

ここまで読んだあなたは、「研修がとにかくたくさんあることはわかった。じゃあ、どれくらい大変で、いくらかかるんだ」というのが本音ですよね。

研修は、1 時間 = 1単位(30分 = 0.5単位)だそうです。
なお、1日に取得できる単位数の上限は 5 単位。

これに関しては、日本公認心理師学会大会は特例にする(大会参加で2単位とか、筆頭発表は2単位だけど、共同発表だと1単位とか)など、細かい規定があるようです。詳しくは原文にあたってくださいね。

協会HPの研修情報を見ると、今年度行われている研修会は、「注)本研修は日本公認心理師協会が今後認定を予定している『専門認定研修』システムにおける研修ポイントとする予定です。」という記載があります。具体的な獲得単位数は記載がありませんが、

だいたい1日90×3の研修時間で、1日3000円~8000円の研修費です。30分毎の単位換算で、10分などは切り捨てのため、90分を1.5単位として計算してみます。

これらの研修が全て⑤テーマ別研修であるとして、1研修3000円(4.5単位)と考えると、

a. 認定専門公認心理師では、1万4千円ほどで、b. 認定専門指導公認心理師では、1万7千円ほどになります。

心理系学会の参加はだいたい7000円~3万ほどかかるところもあるため、研修費としては良心的です。ただ、ここに別途、➀~④までの研修会もついてきます(料金等不明)。

5年ごとの更新制

そして、一度認定された資格も、5年ごとで更新が必要です。

それぞれの資格は、以下の再受講、提出によって更新するようです。

a. 認定専門公認心理師
・専門研修Ⅱの受講
・テーマ別研修(25 単位以上)の受講
b. 認定専門指導公認心理師
・エキスパート研修の受講
・テーマ別研修(25 単位以上)の受講
・プロフェッショナルポートフォリオの提出

 

公認心理師の現状(2021年)

では、実際の公認心理師は現状どのような状態にあるのでしょうか。

第1回合格者数:28,574名。(第1回公認心理師試験(平成30年9月9日及び12月16日実施分)の概要

第2回合格者数:7,864名。(第2回公認心理師試験(令和元年8月4日実施分)の概要)

第3回合格者数:7,282名。(第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施分)の概要)

そして、公認心理師登録者数は、2020年時点で、約4万1千名です。(公認心理師の都道府県別登録者数 2020年度)

一方、「一般社団法人 日本公認心理師協会」会員数は約2700人だったと、2021年7月末のツイッターで入会した人がいっていました。

2700名が全員公認心理師とすると、協会入会者は、公認心理師の約6~7%くらいですね。

ちなみに、1980年代から日本の心理カウンセラーをけん引してきた民間資格「臨床心理士」合格者は、「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」によると、2020年時点で、約3万8千人だそうです。すでに、公認心理師の方が多いんですね。

人数比だけで見れば、国家資格を持つ心理職が多くなってきたとはいえるでしょう。

参考:公認心理師が一緒に働くことの多い多職種は、厚生労働省発表によると、就労看護師は2018年時点で121万8千人日本作業療法士協会が発表している作業療法士の有資格者数は2020年時点で約9万5千人社会福祉振興・試験センターによると精神保健福祉士登録者数は2020年時点で約9万人です。

いち公認心理師としての意見

ここまで見てきて、私個人の意見としては、職能団体としての専門性のさらなる追求は時期尚早なのではないか、とは思っています

理由は、公認心理師の社会的立場の不安定な現状だからです。

公認心理師資格の成立背景は、多職種でいうところの看護師とやや似ています。

看護師の仕事をしていた人たちは、第一次世界大戦(1914年~)には少なくともいたといいます。
それが、看護師資格として整備されだしたのは、第二次世界大戦終戦後、WHOの要請によってだったといいます。
当時あった「日本産婆会」「日本帝国看護婦協会」「日本保健婦会」という団体を統合し、協会母体が1946年に成立してから、看護師資格は1948年に公布となっています。
そして、養成校や連盟参加などが整備されていき、
「専門看護師」は1994年に成立、認定看護師は1998年に成立しています。

では、現場の心理職はどうでしょうか。

心理職は多かれ少なかれ、ケースワークや看護助手の業務を便利屋のようにこなしていたと、1960~1970年代の当時精神科病院で勤務していた大学教授の話をきいたことがあります。
「心理職といえばこれ」という仕事はなく、今ほど他の職種も確立していなかったのでしょう。
そのような「現場の」心理職の歴史があったはずです。病院に20年勤務した心理職のこの時の給料は、新任のリハビリ職員に届かなかったといいます。
そして、臨床の現場で働く心理職の地位を向上しようという活動が実を結び、臨床心理士資格認定協会が1988年に設立しました。
臨床心理士は、心理系大学院を修了して初めて受験資格を得ることのできる資格です。
現在では、臨床心理士は約38000人となり、カウンセラーの資格といえば、現場で求められる資格は「臨床心理士」といえるまでになりました。
2017年に公認心理師法が施行され、2018年には唯一心理系国家資格有資格者の第一号「公認心理師法」が誕生しました。

つまり、業務が先にあって、主に現場で働いていた人たちの専門性の担保と立場の確立のために資格整備されてきた点は看護師も公認心理師も同じといえます。

しかし、公認心理師は現在、国家資格になったとはいえ、算定報酬上目立った改定は現在ありません(令和2年度診療報酬改定情報 ー公認心理師に関連する項目(変更・新設))。

医療分野における心理職が多い現状から見ると、やはりこの点における改善が公認心理師の社会的な立場を確立する上では重要なのだと思います。

このように見てくると、同一職能集団内でのスキルの向上を目指すのは、やや早いような気はしないでもありません。

とはいえ、臨床心理士資格が5年更新の資格であったこと、今後の人材育成の優先度を考えれば、協会発足とほぼ同時にスタートする思考であることは理解できます。

今後、職能団体としてどのような道筋を辿っていくのか、一つのデータになるだろうと思います。

ちなみに、2021年度内に日本公認心理師協会に入会すると、入会費の1万円が無料だそうです。

参考:作業療法士にも認定作業療法士、認定作業療法士 という専門選を担保するための資格があります。第二次世界大戦後、WHOの指導、行政主導の形で協会設立が1966年成立し、同時期に資格も成立しています。専門作業療法士の認定開始は1998年であり、認定作業療法士の認定は2009年で、協会・資格成立からこちらも30年近くあいています。

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