【公認心理師試験】心理学の統計学は難しい?先に学んでおくべき理由

公認心理師試験
この記事を書いたのは・・・

国立大学院の臨床心理学専攻を卒業し、現在臨床心理士、公認心理師の資格をとり、クリニックや学校で勤務中。
精神科病院、クリニックにおける経験を5年以上。
スクールカウンセリング経験あり。
最近ブログ学習中。

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こんにちは、nachiです。

「心理学の研究法がわからない」、「心理検査が理解できない」等、看護師さんや精神保健福祉士さんは試験勉強で苦戦します。

そのような人に向け、記事を書きました。

この記事を書いたのは、第2回公認心理師試験に合格した臨床心理士のnachiです。

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【公認心理師試験の】心理学の統計学は先に学んでおくべき理由

公認心理師試験の勉強をしていると、まずつまずくのが統計学、研究法です。
それは、当たり前です。

心理学専攻の学生が最初にぶち当たる難関なんですから。
私も当時、「なんでこんなにわかりずらいんだ…」と頭を悩ませました。

そんな分野だから、そもそも、試験勉強の参考書をいきなり開いてもわからないに決まってます。

正直、公認心理師試験の参考書で、研究法や統計法についての知識が事足りるのは、心理学専攻で卒論を書いた人が試験勉強として復習のために読む場合くらいだと思います。

では、それはなぜか。
理由は3つあると思っています。

➀初めて学習する人にとって、「心理学」のイメージが「研究」と結びつかないから
②心理学研究の全体像が分からないから
③いったんわからなくなると迷路に入るから

順に説明しましょう。

➀初めて学習する人にとって、「心理学」のイメージが「研究」と結びつかないから

「心理学とは心理現象や心理過程を科学的に研究する学問」と言われます。
言葉で言われてもイメージがわきませんよね。
ここについては、別で記事にしていますので、こちらをどうぞ。

心理学初心者が「趣味で学びたいけど、難しい」のはなぜ?【理由は3つ】

とにかく、「心理学は科学である」
ここだけおさえてください。

②心理学研究の全体像が分からないから

では、「心理学は科学である」とはどういうことなのでしょうか。

心理学が科学であるならば、実験や試行錯誤を行うはずです。

犬に逃げられない電気ショックを与え続けるたのち、逃げられる状況を用意して行動を観察されるように(学習性無力感)、
ねずみのアルジャーノンが迷路を走らされ、ゴールするまでの時間を計測されるように。

そして、その結果は、他の研究分野と全く一緒の、「研究論文」という形で、世の中に発表されます
分野に関わらず、大きな型は決まっています。

研究の目的:どんな背景があって、この分野ではどこまでわかっているが、どこから不明なのか、なぜこの研究が必要なのかを記載
方法:いつ・だれが・対象に・どうするか、どのような方法で研究し、データ収集や分析を行うかを記載
結果:どのような結果が得られたか、表・グラフとともに記載
考察:「結果からどのようなことがいえる」といえるか、先行研究との兼ね合い、本研究の問題点や新しい課題点を記載

他の分野で生きてこられた方も、何かしらの論文には触れたことがあるのではないでしょうか。
この4つに分けて書かれる形だったと思います。

論文の文化に触れてこなかった方も安心してください。
今は「心理学の論文にはそういうテンプレがあるんだな」と思っておいてくれれば結構です。

私が言っている全体像とは研究論文の、この、全体像のことです。

公認心理師試験の心理学研究の学習では、研究法や統計、尺度や分析方法、実験計画の話が出た時に、研究全体の話なのか、データ収集の方法論なのか、結果の記述の話なのか、結果を分析して考察する話なのか、が分かることが大切なんです。

③いったんわからなくなると迷子になるから

そして、参考書を前から順に読んでいくと、このことがわかりません。
だいたいの本で、「心理学も研究論文という形にまとめられて、この4つに沿って書かれるんですよ」とは書いてないのです

これは、「心理学をわかっている人」が書いていて、「心理学の知識は論文の蓄積だよね」ということが暗黙の了解になっているからだと思います。

そのまま、ゴールがよくわからず統計法を勉強していくので、部分的には理解しているものの、自分がどこのなにを勉強しているかわからなくなり、スタート地点にも戻れない・・・という、立派な研究法迷子の完成です。

このようなケースは、心理学科の学生にもよくおこっています。
学生は時間が十分にあるので、じっくりと理解して身に着けることができるし、それが推奨されていると思います。

でも、試験勉強中にじっくりとなんてしてられませんよね。

心理検査の勉強前に統計学を勉強した方がいいわけ

先ほど、「心理学の知識は論文の蓄積」と書きましたが、心理検査も研究によって作られたものであり、結果は、多かれ少なかれ、統計によって判定します

心理検査には、質問紙法、投影法、描画法、作業検査法等、様々な種類がありますが、どの心理検査も、研究によって現在の姿になっています。

例えば、Y-G性格検査という質問紙検査があります。
これは、実施と採点が容易であり、尺度レベルや類型レベルなど、多様な解釈が可能で、さまざまな分野で広く使用される質問紙検査の一つです。これは120個の質問で成り立っていて、質問は、12種類にまとまります。つまり、1種類に対し、10個の質問があるということです。
この120個の質問に「はい」、「どちらでもない」、「いいえ」で答えると、12種類に質問を再分類してみたときに、解答したその人を12種類の視点から表現した結果が出来上がるというわけです。

このようにきくと、簡単に聞こえると思います。

しかし、120個の質問が12種類になるプロセスも因子分析を理解をわかっていないと理解できませんし、「プロフィールが右寄り・左寄り」であることが、なぜ「特徴がない」とか「好ましい」とか言えるのかがわかりません

つまり、検査結果の正しい理解は統計を知らないとできないのです。

心理学研究のファーストステップ

心理学研究に対する理解が大切なことがわかって頂けたかと思います。

「じゃあ、どうすればいいのよ?」と思いますよね。
これはずばり、「まずは心理学の研究論文を1本読んでみる」です。

「え?!心理学の研究論文なんて簡単に読めるの?」「いきなり難しいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、大丈夫です。

「この用語がわからないから駄目だ」、「基礎知識がないからわからないはずだ」と思う必要はありません。

論文を読む目的は、「心理学の知識が世に出るための論文というものの”構成”を理解すること」と、「どこでどんな統計法、研究法が使われるかを知ること=”イメージできるようになること”」です。

つまり、自分が試験勉強として頭に入れなければならない統計知識が、どんなふうに使われるものなのかを知っているのといないのとでは、雲泥の差があるということです。

cinii」では、何本かの心理学の論文が無料で読めます。

「cinii」は、国立情報学研究所が行っているサービスです。

具体的な使い方は先行研究調査で必須!ciniiの使い方【無料】に記載しています。

今回はここまで。

おわり。