こんにちは、公認心理師・臨床心理士のnachiです。
なぜなら、「心理学は食えない」とよくいわれるし、学校の先生からは「やめとけ」といわれることが多いからです。
だけど、興味はありますよね。
これらの点について、nachiが答えます。
私は、某国立大学の心理学科を卒業し、大学院の臨床心理学専攻を修了して、現在は心理学を仕事にしており、心理学には10年以上関わっています。
この記事を読むことで、大学の心理学科に進学するかどうかを決められると思います。
「心理学科はやめとけ」といわれるわけ
心理学を大学で専攻することを、周囲の大人の多くは、やめることをすすめてきます。
それは、なぜか?理由は大きく3つです。
・給料の低さ
・学費の高さ
順に説明していきましょう。
心理職のイメージのなさ、悪さ
=「メンタルの弱い人」を相手にする
=「ミイラ取りがミイラになる」ことを、大切な人ならなおさら心配・・・
「詳しくはわからないけど、大学で学んだことを活かして就職するなら、カウンセラーになるんでしょ?あんまりいいイメージない・・・」という感じです。
なぜあまりいいイメージがないかというと、
世の大人たちは、「自分はメンタルが弱い」とは思ってはいるものの、「カウンセラーに相談するほどではない」と思い、日々頑張っている。だから、自分の大切なあなたが、自分の知らないその部分に直接関わるのは、なんだか嫌な感じがする・・・というものです。
もしくは、「単純にどんな仕事でいくら稼げるのか知らない」ということがあるかもしれません。周囲にあまりいなくて、自分の知らない職業なら、不信に思うこともわかります。
これが、弁護士や医師、看護師、○○整備士、公務員、教師・・・などであるなら、そうはならないはずです。でも、カウンセラーは「謎である」という理由で反対されることが多いです。
この記事を読んでくれた人は、「心理学科進学=カウンセラーになる」ではないことを知り、そのうえで、「自分はカウンセラーになりたいか?」を考えてください。
給料の低さ
まず、どの学科も同様ですが、大学で心理学科に進んだからといって、就職で心理学を使って就職するかは別です。
現に、心理学科卒の学生の就職先で一番多いのは、一般企業です。「え?」と驚かれるかもしれませんが、事実です。詳しくは、藤井さんという方がまとめてくださっているので、こちらをご覧ください。転職サイトによると、一般企業に就職した場合の初任給は22万円ほどだそうです。
そして、大卒で心理学を使って就職する際、人気なのは自衛隊や児童相談所職員などの公務員であることが多いです。この場合は、その地方の公務員と同等のお給料を得ることができます。しかし、医療分野や教育分野には、ほとんどありません。理由は次の通りです。
心理学の資格取得者、または、資格取得予定者しか、医療分野や教育分野では募集されないからです。そして、その資格を得るためには、多くの場合、大学院を修了した後、試験に合格しなければなりません。
つまり、心理学を使って就職を考えている人のほとんどは、大学院に進学をして、臨床心理士や公認心理師などのカウンセラーの資格を取得し、就職をしています。詳しくは、これから真剣に心理カウンセラーになるには【資格】を見てください。
大学院修了後のお給料は厳しいのが現実で、だいたい20万円前後です。具体的なやりくりのつらさは、カウンセラーなんでつらいんだろう? 理由は5つ【あなたも当てはまるはず】にまとめています。これからカウンセラーを目指す人は目を通しておくとカウンセラーのリアルが想像できると思います。
学費の高さ
ですが、そうです。
「カウンセラーになりたい」という人は、大学院に進学する必要があります。
国公立の心理学系大学院(修士)では、入学金が28万円ほど、授業料が53万円ほどです(参考)。
大学院に進学しないのであれば、大学卒業と同時に就職して給与を得ている人が多い2年間に、新たに130蔓延程支払うのですから、そういう意味で、学費は高いと言わざるを得ないでしょう。
以上が、がここまでのまとめです。
大学で学ぶ心理学の魅力
ここまで、大学の心理学科を選択することのネガティブな面を見てきました。
では、「心理学科進学に魅力はないのか?」と聞かれれば、決してそんなことはありません。なぜなら、私は心理学科に進学し、今でも心理学を仕事にしているから。
以前私は、このようなツイートをしました。
上のツイートを少し補足して言い換えると、心理学を大学で専攻することのメリットは、
・統計的に物事を見ることができる
・自分を客観的に見ることができる
です。順に説明していきたいと思います。
心理学でわかることがわかる
「何を当たり前のことを・・・」と思われるかもしれませんが、大切なことです。
大学で心理学を学びたい人の多くは、心理学を、なにか、他人の心を理解するようになる技術や知識だと考えている人が多いようです。
その論文によると、高校生にとっての心理学は、「人とうまく付き合えるようになるためのもの」で、「楽しそうなもの」というイメージだそうです。
ですが、心理学は「こころの科学」と言われています。
これをもう少し言うと、「心理学という『学問』は、『科学』である」ということです。
ここについて、詳しくは、心理学を趣味で独学、難しいのはなぜ?【理由は3つ】で書いていますので、興味のある人は見てくださいね。
そして、学問、科学というからには、学問上「わかっていること」と「まだわかっていないこと」があります。それはちょうど、原因や治療法が確立していない病がいまもあることと、全く一緒です。
こころというものについても、「わかっていること」と「まだわかっていないこと」があるのです。
もちろん、「自分の悩みは解消できるのかな」と考える人は多いです。
それについて答えるなら、多くの場合、イエスです。
だけど、それは、心理学科に進学したからではありません。
「心理学」を学んでヒントを得て、それを使って、時間をかけて悩みを解決するんです。だから、大学で心理学科に進学したから、ではないことはおさえておいてください。これについては別記事にもしようと思います。
統計的に物事を見ることができる
「統計?」と思う人も多いでしょう。
簡単に言うと、「言いたいことを正確に、ちゃんと言えるために必要なもの」です。
例えば、「血液型でA型の人は几帳面」とか「B型の人は大雑把」とか、聞いたことがあるでしょう。だけど、あわせて、「科学的な根拠はない」とか「正しくない」とか言われているのを知っている人は多いはずです。
それは、血液型と性格について、世界中のA型の人やB型の人に一人づつ、「あなたの性格を教えてください」と言って回った人がいるわけではないからです。
また、ある国のある村の人たちにインタビューした結果から、そのように言われているわけでもありません。
「そういう人が多いような気がするよね」という意見がある程度受け入れられているにすぎないということです。
つまり、「そういう人が多いような気がするよね」という「個人的な意見」や「感想」と、「科学的に正しいこと」、「実証されていること」とでは、明確な違いがあるということです。
この血液型と性格についての関連性を「科学的に」あると、正確に、ちゃんと言いたいなら、統計を用いる必要があります。
世の中には、この血液型と同じように、「見た目上正しそうなこと」、「有名人が言っているから正しそうなこと」が多くあります。それが、すべて正しいわけではないことが、よくわかり、自分の頭で考えられるようになります。
また、私は、心理学の統計を理解できれば、他の分野や業種のどんな統計も理解できると思います。
なぜなら、目に見えないものを目に見える形にしようとしているものが心理学の統計であり、その他の多くの分野は、そもそも目に見える物を扱っているからです。難易度が心理学の方が高いと思います。
自分を客観的に見ることができる
大学で心理学を学ぶということは、2~4年間という時間を、統計含め、心理学に向けるということです。
カウンセラーなんでつらいんだろう? 理由は5つ【あなたも当てはまるはず】でも少し書きましたが、大学で心理学を学ぼうとする理由は、自分のためです。主観的に自分を見ているのです。
自分に関心が高い人が集まって、4年も時間があったら、自分のことを見る時間が多くなります。
これは、贅沢な苦しい時間でもあるのですが、心理学を真面目に学んでいくと、自分を心理学のツールを用いて客観的に見ることもできるようになっていきます。
つまり、ごちゃごちゃに頭を悩ませていたことを客観視できるようになり、自分自身を一定の基準でみることができるようになるのです。これは悩み解決の大事なステップです。
どうだったでしょうか。
大学で心理学を学ぶということは、特別なことではありません。結局、他の学科と一緒で、「心理学を4年以上かけて勉強する」という決断に自分が責任を持てるかどうかだと思います。親や先生は決断の責任をとってはくれないので。
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今回はここまで。
おわり。
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