こんにちは、nachiです。今回のテーマは、私がblogを書こうと思ったきっかけに関わります。
このつらさをやや抜けた感があるから、twitterで「脱初心者」と名うってみた次第です。
心理士はつらいです。特に最初の3~5年間までは。
でもなぜ理由が腑に落ちないんですよね。
私は5年ほど経ってから、つらい理由がはっきりしてきました。
そんな私が、今どうしたらよいかを説明します。ぜひ最後まで読んでください。
対象読者:「心理士、カウンセラー、つらくてやめたいなあ」と考えている人
カウンセラー、なんでつらいんだろう?
理由は5つ【あなたもどれかは当てはまるはず】
理由は次のようなものです。
やりたかったことじゃない
これは単純です。例えば、
「心理士はもっとクライエントの全体を見立てて関わるもんだ!」
とかです。
だいたい最初の衝撃はこれです。
多職種がわかってくれない、協力してくれない
病院や児童相談所、裁判所など、心理士の働く現場は様々ですが、多くの場合、心理士より社会的地位の高い人と働くことが多いです。
そのような多職種と一緒に1人の人を見たり、案件を共有したりすることは当たり前となってきます。その時思うのがこれです。
「自分以外は心をわかっていない」って。
説明してもわかってもらえない。周りが敵にすら見えてきます。
給料が低い
分野によって、地域によって様々ですが、だいたいの心理士のお給料はそれほど高くありません。
友人に聞いて、いろいろな分野の初任給をまとめると、各相場は以下の通りです。
地方 | 都心 | |
教育 | 時給3000円~5000円のSC、 週1~2日(年20日ほど) = 月4~6万 | |
医療 | 16~20万 | 18~22万 |
国家公務員 | 21~29万 |
補足をすると、教育分野だけで暮らしていけないので、数か所のSC(スクールカウンセラー)を掛け持ちしたり、クリニックに週1~2で勤務したりしている人も多いです。
また、臨床心理士の場合は大学院まで、公認心理師もこれから目指す人は大学院に進学するのがメジャーになってくるのだと思いますが、修士や博士に進む多くの人は奨学金を借りて進学しますよね。奨学金の返済、生活費や必要経費等を差し引いて考えた時、これらはなかなかに厳しい金額です。
また、臨床心理士の場合は研修会への参加が資格更新に義務付けられていますからね。
具体例を示しましょう。
諸経費:
- 水道・電気・ガス等光熱費:1万5千円
- 通信費:1万円
- アパード代:4万円(地方)、都心だと10万ほど
- (車代+ガソリン代:4万円)
- 食費:3万円
- 奨学金:2万円
- 研修費:ー?
ざっと見てみると・・・マイナスもいいとこですね!
責められる
名札の職種として「臨床心理士」と書いてあったり、実際にカウンセリングをしていたりすると、一度は必ず患者さんやクライエントさんに責められます。
「なんでわかってくれないんだ」、「どうしたら治してくれますか」などです。
その言葉の前には「心理士のくせに」という言葉がついてくるような気がしますよね。
つらいことです。
できない感
最初は感じないかもしれませんが、3か月を過ぎてくると、自信のなさが前面に出てきます。
カウンセリングをしても、病棟に出ても、検査をしても、多職種と話をしても、「確かさ」が足りない。
「私ってなんで心理士になりたかったんだっけ?」とも思います。
私の体験談【分岐点】
どうでしょう、かなり当てはまったのではないでしょうか。
この中のほとんどは私の体験談です。
- 「お給料も少なくて、生活もままならなくて…なのに責められて…報われない」
- 「多職種と協働して、なじんでいこうとしてるのに、誰も協力してくれない、わかってくれない」
- 「私以外の、もとからいる心理士がなんかへんてこなんじゃない?もっと努力してよ!」
そんな風に思って仕事をしていました。
あ、与えられた仕事はこなしていましたよ。
そんな中、私を救ってくれたのは、学生時代の尊敬する先生でした。
時間のない先生は、ちょこちょこと私の現状を聞いた後、
「5年以上同じ分野にいれば『いいところ』まで見えるから、同じ分野にいりゃあいいよ。
ぼくが許す。」
と言ってくれました。
慰めや共感の言葉は一切なかったのですが、私が何よりも求めているものだったのを覚えています。
今思うと、現状と離職の許可であると同時に、「私はこんな風になりたかったんだな」ということを再確認した体験でした。
そこからは現状を現状のまま認識し、他の理由も重なって、すんなりと離職する運びとなったのを覚えています。
じゃあ、実際どうしたらいいの?!
もちろん、私とは違う形、違う業界で働いた人もいるでしょう。
でも、きっと、感じることは似てると思います。
「いくらつらくても続けなければならない」とか、「今逃げたらずっと逃げ続ける人生になる」とか、そういうつもりは一切ありません。
ツラけりゃやめたらいいし、やめたら何か見つかるかもしれないし。3年待たずに離職したっていいんですよ。
こちらについて、詳しくは、心理士の仕事がつらいあなたへ(初心者向け)【体験談ありにまとめています。
だけど、まずは現状を一歩引いて自分を見ることは必要です。
今は、自分がどこを歩いているのかわからない状態です。自分の思っていることは正しいのか間違っているのか?そもそも正しいとか間違っているとか考えることは心理士として正しいのか?というように。
ここまで読んでくださった人は、やや自分の状態がわかったと思います。
一言で言うと、迷子でしたね。
迷子は現在地とゴールがわかれば、次の一歩が踏み出せます。
ここからは、実際に、自分に当てはめて考えてみてくださいね。
とりあえずのゴールを明確にする。
尊敬する人はだれそれとか、○○ができるようになるとか、学生のような目標ではなく、
「働き始めた私が、今リアルに想像できる『こんなこといいな、できたらいいな』状態」を理解することが大切です。これがとりあえずのゴールになります。
私の場合は、一言をくれた先生の状態でした。違う人間だし、生きてきた時間も違うから、先生と、まったく同じ「味」を出せるわけではないんです。
ないんですけど、「ああいう状態を作り出せる」というのが、私にとってはリアルで、わかりやすいモデルになりました。それを明確にしてください。
とりあえずの一歩を明確にする。
次に、迷子の私はどこにいるのか。
一番客観的にみると、心理士である・・・ということ以前に、「ただの社会人○年目の私」なんです。そうですよね、学生ではなくなって○年です。これは間違いない。
二番目に、「○○株式会社とか○○病院に勤めている私」です。
これも、なっとくできますよね。外来の患者さんや地域の人から見たら、看護師さんも精神保健福祉士さんも、心理士も一緒で、「病院の従業員」です。
「心理士としての私」は、そのあとに来ます。
言い方を変えると、あなたが心理士であるということは、社会にとってはそれだけ優先度の低い事柄なんです。
「○○病院に勤めている人の運転が荒くて事故りそうになった」と、地域の人からの苦情が入ったとします。一番優先して対処するのは、「病院として謝ること」です。
そのあと、それがあなただとわかり、謝ることになったとき、心理士としてではなく、病院に勤める、社会人○年目の私として謝りますよね。
だから、最初は、「周りの人から見て一緒に働く人として、適度な人」を目指すというのが最優先です。
事務のお姉さんから、総務のおじちゃんからも、「○○課に○○さんって人いるなあ」、人に切られて「別に嫌な人じゃないよね」と思われることです。
「心理士としてどう振舞うべきか」というのは2の次、3の次でいいと思っています。
上司に怒られてからでもいいです。
そして、もう一歩。
そのうえで、心理士としては、まず、「給料分の仕事をすること」を目指すことが大切です。
例えば、手取として月15万円もらったとします。週休2日で月に働く日数は20日。
私たちの手取の日給は7500円です。1日8時間労働として、時給940円です。
「少ない」というのはわかっていますよ。
では、一方で、私たちが企業や組織に差し出せる利益とは何でしょうか。
つまり、企業や組織は、私たちを雇うことで、どこから売上を得ているでしょうか。
病院で考えてみましょう。
病院の利益は診療報酬によって定められています。
では、その中で心理士はどんな稼ぎを病院に計上できているでしょうか。
多くの場合、それは心理検査です。心理検査には、複雑さに応じて点数が分かれています。
つまり、検査実施数×得点分、病院に売り上げとして貢献したといえます。
1週間で、
- WAIS:3回
- ロールシャッハテスト:1回
- AQ質問紙:5回検査
を頼まれたとします。
これは、
WAIS(450点)×3 + ロール(450点)×1 + AQ質問紙(80点)×5 = 2200点 =2万2千円(2021.6.2現在)
です。
ここで先ほどの例をもう一度みてみましょう。
どうでしょうか。3日分のお給料と同等です。
心理検査を実施したことのある人には、これを3日でこなすのがいかに大変か、わかると思います。
お給料がどれだけ、優遇されているかわかりますね。
わかります、検査や金だけで心理士の仕事を語れないのは。
だけど、これは労働者である以上、受け止めなければならない視点ではあるのです。
そこは押さえておきましょう。
私たちは、心理士としてだけでは現状稼ぎを出していない。これは事実です。
だからこそ、「給料分の仕事をする」ことを目標にする。「心理士として」が現場上難しいようなら、「課の人間として」、「職員として」と考えてあげると、バランスの取れた社会人になっていいと思います。
とはいえ、金銭的には厳しい事実は変わりないので、奨学金は減額申請をするのも1つです。
最後に
ここまで述べてきましたが、私は、心理士は少しくらい苦しんだほうがいいんじゃないかとは思っています。
他人の痛みがわかるため、とか、成功体験をするため、ではなく、
「自分の苦しみから他人の苦しみに目を向けるため」です。
どんなに建前を並べようと、心理学を学び始めたのは、心理士になろうと思ったのは、絶対に自分のためなのです。
「人の話を聞いて『楽になった、ありがとう』と言われたから向いてると思って」とか、
「昔スクールカウンセラーに助けてもらって、自分もそうなりたい」とか、全部です。
結局は自分が今よりラクになりたいからです。それ自体を責める気は一切ないし、その行動は建設的だと思います。
しかし、「心理士」とは「他人のために」心理学の知識を学び、使える人をいいます。
他人をネタに自分がラクになる人ではありません。
だから、自分から他人に目を向けるために試行錯誤する時期は必要なのだと考えています。
厳しいことを書いたような気もしますが、結局心理士の良し悪しは、患者さんやクライエントにとって、「いい環境になれてるかどうか」で判断するものだ、と私は思っています。
考えは変わるので、「現状」ですが。
おわり。
コメント
はじめまして。私は心理士で、働き始めて2年半がたちました。なぜか、「誰かのために働く」というのがしんどくなってきています。誰かの心に寄り添える心理士という仕事にあこがれはあったのですが、仕事をしていると、「なんで私が他人の心を支えなくてはいけないんだろう」(最低ですね)と思ってしまうこともあります。これはもう、私には心理士は向いていなかった、ということなのか、もう少し続けてみれば何か変わってくるのか、もやもやしていたところ、この記事を見つけました。
私事ばかり語ってしまってごめんなさい、改めて自分の仕事に向き合うきっかけになりました。素敵な記事をありがとうございました。
コメントありがとうございます。遅ればせながら返信させていただきますね。
専門職として働くって精神的にキツイんですよね。「ここにいるだけでもしんどいのに、専門性とか(無理)!」って感じです。だけど、少し違った視点で見ると、必要とされていることがあるからこそ、そこで「働く」という人がいるはずなのです。他人を支える必要があるから、あなたが雇われている。何が言いたいかというと、あなたはそこいるだけで、すでに他人を支える役割をある程度になっていたのではないかな、と思います。
今どのような状況にいらっしゃるかわかりませんが、素敵な職業ライフを送られることを願っています。